お店や友達の家で、水槽が置いてあって色とりどりの魚や緑鮮やかな水草が植えてあってきれいだと感じたことがあると思います。
水槽をインテリアと捉えるか、家が狭くても飼える小さなペットと捉えるかは人それぞれで熱帯魚飼育=アクアリウムの楽しみは千差万別でハマればこれほど奥の深い趣味はありません。
ただ、生き物を飼うということで、ただ水槽と魚をお店で買ってくればすぐに飼い始められるというほど簡単ではないというのと、命である以上ある程度の下調べをして最低限の知識を付けてから飼育を開始しないと、魚に取ってもかわいそうなことになってしまいます。
私もアクアリストの端くれとして、初めて熱帯魚を飼おうと思っている人に知っておいて欲しいことを紹介します。
アクアリウムでは熱帯魚と海水魚は違う
一般の人が熱帯魚というと、水族館にいるような色とりどりの綺麗な魚を想像しますが、青や黄色の珊瑚礁にいるような魚をアクアリウムの世界で海水魚といい、熱帯魚というと水草水槽で飼育される南米アマゾンや東南アジア原産の魚をいい、人工的に海水を作って飼育するか真水を利用して飼育できるのかに始まり飼育設備がまったく異なります。一般的に海水魚の飼育は上級者向けです。
例えば、ファインディングニモの映画で注目を浴びたカクレクマノミは海水魚、ネオンテトラやエンゼルフィッシュは熱帯魚なので、一緒の水槽で飼育することはできません。飼いたい魚がいるなら先に調べてから飼育設備を準備しなければいけません。初めてチャレンジするなら淡水の熱帯魚が一般的です。
最低限飼育に必要な設備がある
水槽はもちろんですが、フィルター(濾過装置)、保温する為のヒーターとサーモスタット、水質調整剤、熱帯魚の餌が最低限必要です。
まず、水槽の限られた水量なので水中の酸素を濃度が下がらないように常に水を循環させる必要があります。フィルターで水を循環させることによって、水が腐るのも防ぐことができ、更に濾過装置によって水を綺麗にすることで、1週間~2週間に一回の水替えで水質を維持することができます。
熱帯魚というだけあって、冬場の日本の気候で水温が低下すると熱帯魚は死んでしまいます。冬の間も水温を26度周辺に保つ必要があり、サーモスタットとヒーターのセットでそれができます。サーモスタット一体型のヒーターもあります。
熱帯魚は真水で飼育するので、水道水を飼育水に使いますが水道から出たばかりの水をそのまま注ぐと、水道水の腐食防止に使われている塩素が魚の鰓を破壊して死んでしまいます。最低限、塩素を除去するカルキ抜き、できればPH(ペーハー)や有害物質を無害化する効果を持った水質調整剤を毎回の水替えで使用することが必要です。
それ以外にも水槽を照らす蛍光灯、水温計、水草を植えるなら底に敷く砂利など必要なものはたくさんありますが、まず最低限必要な設備はそろえましょう。大体の熱帯魚屋さんには飼育スタートキットがあります。
買って来てすぐ魚を入れることはほぼできない
上記の器具と魚を同時に買って来て、熱帯魚屋さんに行ったその日から飼育をスタートできるわけではありません。丈夫な熱帯魚で無理やりやってたまたま上手く行くことはあっても初心者がいきなりそれに挑戦するのはリスキーです。
アクアリウムの水槽には、水槽の環境、水質の安定という大切な概念があります。見た目ではわかりませんが、安定した水槽は水温、水質がヒーターとフィルターによって維持された上で、魚が餌を食べて糞をして、その糞がフィルターに吸い込まれて、フィルターの中にいるバクテリアによって分解されて水が綺麗になる、そしてまた魚が餌を食べて…というサイクルが成り立っています。難しいことはアクアリウムにハマッってから段々覚えていく物ですが、とにかくバクテリアの存在が重要です。
買ったばかりの真新しいフィルターの真っ白なフィルターにはまだバクテリアがいません。そこにいきなり魚を入れると、魚の糞で汚れた水をろ過できずに水質が急激に悪化して魚が病気になったり全滅したりします。
水槽と器具を購入したら、まずは魚を入れない空っぽの状態でスイッチを入れて1週間くらい水を循環させてください。見た目は変わらないので寂しい気がしますが、水道水に含まれている微量の有機物をエサに自然にバクテリアがフィルターの中に繁殖して水槽環境が安定します。
熱帯魚の投入は時間を掛けて
1週間経って水ができたらいよいよ熱帯魚の投入です。ショップで水を入れたビニールに熱帯魚を入れてくれますが、家に持ち帰ってからビニールを開けてザバーンと水槽にあけるのはやめましょう。こちらもリスキーです。あと少しですので丁寧に水あわせという作業をしましょう。
まず、ビニール袋ごと水槽の水に浮かべます。それによりビニールの中の水温が水槽と大体同じになります。さらにビニール越しとはいえ熱帯魚自身に新しい環境へのストレスを感じさせるのを軽減できます。
15分位したら、ビニールの中の水を半分捨てて、水槽の中の水を同じだけ入れて15分待ちます。これを何回か繰り返します。これにより、一番重要なショップの水と水槽の水の水質の差をだんだん緩やかに熱帯魚に慣れさせることができます。
そして、ビニールの中の熱帯魚が充分に水温と水質、水槽環境に慣れたところでついに水槽に放ちます。
自分の水槽に初めて熱帯魚が泳ぐ瞬間の感動は言葉にできないものだし、アクアリストとして長い経験を積んだとしてもそれはもう初めての人にしか味わえないものですので、うらやましい瞬間です。その後は、日々の飼育についていろいろ知識を蓄えながら水槽の前で時間を忘れる日々になるでしょう。
最後に
いかがでしたか?
かなり小うるさい感じになってしまいましたが、上記のことを守るだけで買い始めた初日に熱帯魚を全滅させてしまって、その後何度新しい魚を買ってきてもみんなすぐ死んでしまう。そして熱帯魚飼育自体を諦めてしまうという悲しいことにならずに済みます。
熱帯魚飼育はとても楽しい趣味ですが、最初に知っておくことが必要な情報もいろいろあります。是非こちらを参考にはやる気持ちを抑えながらじっくり準備して万全の状態で飼育を始めてください。